82歳男性が見た“この世の地獄 妻認知症、長男引きこもり、自らは鬱病

2014年06月27日 00:15

老老介護から来る無理心中未遂事件は後を絶ちません。
私が以前住んでいた集合住宅においても発生しました。
私の住む市においては、まだ稀有なケースであり、
普段から当時の在宅介護支援も介入していたケースだけに、
関係者には衝撃でした。
我々のような介護にたずさわる者たちは日曜も休みでない場合もあり、
昼間は仕事に追われ地域住民に目を配る事や、自治会や民生委員らと、
プライベートにおいては、うまく連携できていないのではないでしょうか。。。
私自身、同じ集合住宅で事件が起きた時も、その当事者を全く知りませんでした。
決して無関心なわけではないのですが。。。。。


妻認知症、長男引きこもり、自らは鬱病…
82歳男性が見た“この世の地獄


 《妻認知症で疲れた。息子鬱病との二重苦だ》

 事件後、自宅から見つかったメモには悲痛な心の叫びが書き残されていた。大阪府枚方市で3月、無職男性(82)が認知症の妻=当時(73)=を電気コードで絞殺し、自身も自殺を図ろうとする痛ましい事件が起きた。殺人罪に問われた男性は、次第に記憶を失っていく妻と、10年以上引きこもる鬱病の40代長男の世話を一人で抱え込み、自身も鬱病を発症した結果、「心中するしかない」と思い詰めたという。大阪地裁は6月、男性に執行猶予付きの有罪判決を言い渡したが、悲劇はなぜ防げなかったのか。

■「3歳児」になった妻

 男性と妻は昭和39年に結婚。いつも一緒にいる仲むつまじい夫婦だった。唯一の悩みは同居する鬱病の長男だったが、たまに夫婦で旅行に出かけるのをささやかな楽しみにしていた。そんな老後の暮らしに異変が訪れたのは今年の正月のことだ。
 1月5日早朝、妻が突然激しい頭痛を訴え始めた。すぐに病院に連れて行ったが、CT検査の結果は「異常なし」。処方薬を飲ませて経過をみることになったものの、症状はどんどんひどくなった。
 昼夜を問わず何度も両手でこめかみを押さえ、「痛い、痛い」と繰り返す。腕時計をしているのに時間が分からなくなり、炊飯器の使い方も忘れてしまう。3月13日、男性は再び妻と脳神経外科を受診。告げられた病名は認知症だった。男性は医師から「もう治りません。奥さんを3歳児だと思って接してあげてください」と言われたという。
 男性はその日から、日常生活がままならなくなった妻と、部屋に引きこもる長男の世話に追われた。昼は近くの診療所まで妻をリハビリに連れて行き、帰宅後は妻と長男のため風呂や食事の支度をした。
 間もなく80代の体と心は悲鳴を上げた。夜になっても眠れず、手の震えが止まらない。鬱病の症状だった。
 男性はやがて「自分が死んだら妻の面倒を見る人がいない。妻を殺して自分も死のう」と決意。3月31日午前、長男に3千円を持たせて買い物に行かせた後、妻と2人きりになった自宅で、テレビを見ていた妻の首を背後から電気コードで締めた。直後に自宅を飛び出し、近くの公園で首や手首を包丁で切って自殺を図ったが、公園関係者に発見され、死にきれなかった。
 5~6月に大阪地裁で開かれた裁判員裁判では弁護側、検察側の双方が、犯行時の男性の精神状態を、判断能力が著しく低下した「心神耗弱状態だった」と主張。地裁も心神耗弱を認め、男性に懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役6年)を言い渡した。

■無言の長男に絶望

 「老老介護」が悲しい事件に発展するケースは増えているが、男性の事件で特異なのは鬱病の長男まで抱えていたことだ。弁護側は公判で「長男が鬱病でなければ事件は起きなかった」と主張していた。
 男性の長男は中学時代にいじめに遭い、高校入学後に自宅に引きこもるようになった。男性に連れられて自立訓練に通い、23歳の時に就職できたものの、24歳で鬱病と診断された。35歳まで職を転々としたが、現在は無職。精神障害2級の認定を受け、障害年金を受給して暮らしている。
 薬が欠かせず、かつては自殺を図ったこともあった。騒音に敏感で、車のマフラーの音が気になると夜中に家を飛び出すこともあった。そんな長男の世話を、男性は昔から一手に引き受けてきた。車の持ち主に10万円を渡し、マフラーを交換するよう頼み込んだこともあったという。
 男性は妻が認知症と診断された夜、長男の部屋に行き、「お父さんとお母さんを助けてくれ」と泣きながら訴えた。ところが、長男は押し黙ったまま何も答えなかった。男性は傷ついた心を慰めてくれる相手すらいないことに絶望し、誰にも助けを求めないまま、社会から孤立していった。

■「この世の終わり」

 実は男性には離れた土地に暮らす長女がいた。しかし、男性は長女の嫁ぎ先の家庭を気遣い、「お母さんが認知症になった」と電話で伝えただけで、具体的な相談は一切しなかった。
 長女は事件前日の朝、一人で妻と長男の介護を続ける男性を心配し、実家に電話をかけていた。受話器を取った母親に父親の所在を聞くと、「銀行に行った」と答えた。長女は日曜に銀行に行くことを不審に思いつつ、父親の声を聞かないまま電話を切った。
 実は男性が銀行に向かったのは、妻との心中後に必要な妻と自分の葬儀代や長男の生活費を現金自動預払機(ATM)から引き出すためだった。男性は事件の数日前から、100万円を超える現金を何度も引き出しては、封筒に小分けにしてたんすの中に入れていた。長男あてに預金の在りかや遺産相続などのメモも残していた。
 証人として法廷に立った長女は「もしあの時に父と話をしていれば、事件は起きなかったと思う。悔やんでも悔やみきれない」と嗚咽(おえつ)を漏らした。
 長女によると、もともと隣に男性の弟が住んでいたが、義理の姉が認知症になり、数年前から岡山県で住み込みで介護に当たっているという。長女は「父は認知症を『この世の終わり』と思ったのではないか」とも話した。

■ベッドで手合わせ…

 男性は逮捕後間もなく釈放され、府内の医療施設に入院。現在も鬱病の治療を受けている。しかし、心労からか体重は30キロ台まで落ち、法廷内のわずか数メートルの距離も弁護士の肩を借りなければ自力で歩けなくなった。夢に妻が出てくるといい、ベッドの上で手を合わせながら「すまない」とつぶやき、贖罪(しょくざい)の日々を送っているという。
 公判で弁護側は、男性自身の鬱病が進行し、第三者に助けを求める選択肢が思いつかない状況だったと指摘。男性が妻の症状をかかりつけ医に相談していたにもかかわらず、医療機関がデイケアを勧めなかったことなどにも触れ、「周囲がもう少し男性に寄り添っていれば、悲劇を防げた可能性はある」と強調した。
 厚労省の研究班が昨年6月に発表した統計では、65歳以上の高齢者のうち、認知症の高齢者は平成24年時点で約462万人。認知症になる可能性がある軽度認知障害(MCI)の高齢者も約400万人と推計されている。実に65歳以上の4人に1人が、認知症とその予備軍になる計算だ。
 離れた場所に暮らす家族が、介護に苦しむ身内をどう支えるのか。介護で孤立する高齢者を近所の住民や行政機関がどこまで助けることができるのか。高齢化が進み、認知症患者を抱える可能性が高まる中、事件が突き付けた問題は、決して他人事ではない。
   産経新聞(2014年6月26日)
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