訪問診療医師が消える 報酬大幅下げで在宅医師に打撃  

2014年05月15日 14:27

訪問診療医師が消える 老人ホーム膨らむ不安
報酬大幅下げで在宅医師に打撃
 

4月に行われた在宅医療に対する診療報酬の大幅引き下げを受け、老人ホームなど高齢者向け施設に医師を派遣している医療機関の間で「割に合わない」と診療体制を見直す動きが出始めた。今夏以降にこうした流れが本格化する可能性もあり、施設関係者からは「在宅医療がなりたたなくなる」との不安の声が漏れる。
「医療機関との関係の薄い施設に医師が来なくなるかもしれない」。神奈川や静岡県の介護付き有料老人ホームなど16施設を運営する愛誠会(東京・千代田)の岡村幸彦社長はこう話す。

「患者1日1人に」
医療サービスに対する診療報酬は2年に1度改定される。今年4月の改定では、老人ホームやグループホームなど高齢者向け施設に訪問診療を行った際の報酬が引き下げられた。1人の患者に対し月最大5万円程度あった医師の技術料が、同じ日に同一施設の複数の患者を診察すると4分の1に減った。
医師側からすれば「割に合わない」となる。実際、愛誠会にも「診察する患者は1日1人、一施設1カ月あたり計20人までにしたい」との申し出が医師からあったという。
在宅医療の診療報酬は2012年に増額された。一度に多くの患者を診察できることから、施設への訪問診療に対する注目度が高まった。
「昔は往診医を頼む際に菓子折りを持ってお願いしていたのが、医師側から営業に来るほどになったのに……」と岡村社長。「厚生労働省ははしごを外すのが早すぎたのではないか」。二転三転する国の方針に不信感を隠さない。
施設側の負担も増している。医師の訪問時は施設職員が患者の状況を説明するなどの対応が必要だが、その手間も増えた。
首都圏で10カ所の介護付き有料老人ホームを経営するアズパートナーズ(東京・千代田)シニア事業部の浅見泰之マネージャーは「これまでは特定の日に対応すればよかったが、1日1人に限定され職員は毎日拘束されるため業務が回らなくなっている」とこぼす。
「かかりつけの医師が来なくなった。面倒を見てくれないだろうか」。千葉県松戸市で「いらはら診療所」を経営する苛原実院長のもとに4月上旬、老人ホームの経営者から訪問診療を打診する電話がかかってきた。採算が合わなくなった医師が訪問診療をやめたという。「手いっぱいで断らざるを得なかった」。苛原院長は苦渋の表情を浮かべる。

3分の2で減額
「在宅医療と介護の地域モデル」を掲げるいらはら診療所自体も、今回の改定でダメージを受けた。約350人の患者に訪問診療を行っているが、3分の2が減額対象となる高齢者向け施設の居住者。医師の数などから、訪問回数を増やすことは難しい。
業界団体「サービス付き高齢者向け住宅協会」(東京)が3月、訪問診療を実施する医療機関などを対象に実施したアンケート調査では、「看護師を同行しない」「診療時間を短縮する」などの意見があがった。
厚労省によると、4月末時点で在宅を担当していた医師がいなくなったと報告されたケースは全国で3件。既にいずれも代わりの医師が見つかったという。
しかし保険診療は実際に医療機関に技術料が支払われるまで時間がある。現在は様子見の医師も少なくなく、影響が本格的に出てくるのは夏以降とみられている。新宿ヒロクリニック(東京・新宿)の英(はなぶさ)裕雄院長は「新規に訪問診療をやってみたいという医師も出なくなってしまう」と懸念。今後、各地で混乱が表面化する恐れもありそうだ。

かじ取り悩む厚労省 悪質業者の存在が背景に
診療報酬の大幅な減額が打ち出された背景には、施設への訪問診療が割のいい“ビジネス”として成立するようになり、一部で悪質業者の存在が指摘されるようになったことなどがある。
厚生労働省によると、患者を紹介して報酬の一部を受け取る紹介業者が登場したり、報酬のキックバックを目的に訪問診療を受けることを居住者に義務付ける高齢者向け施設が出てきたりしたという。
厚労省医療課の宇都宮啓課長は「そもそも一般的な高齢者向け施設では、医療機関に通院できないと考えられる高齢者は3割に満たないはず。しかし施設によっては入居者の9割が訪問診療を受けていた」と指摘。「医療資源の効率的な利用を考えても問題がある」と説明する。
一方で厚労省は増え続ける医療費を抑制するため、医療機関のベッドを削減し、施設や自宅での在宅医療を充実させる方針を進めている。
在宅医療を手掛ける医療機関は11年時点で病院で28%、診療所で20%にとどまり、12年に診療報酬が引き上げられたのもこれらの割合を引き上げる狙いがあった。
医療関係者からは「在宅医療を行う診療所については、登録要件など報酬以外の締め付けもきびしくなっている」との指摘も聞かれる。厚労省もアクセルとブレーキとのバランスに苦しんでいるようだ。

診療報酬改定、思わぬ波紋 「制度乱用」排除が裏目に

厚生労働省が決めた4月の診療報酬改定が思わぬ波紋を広げている。医師が高齢者施設で多くの患者を一度に診察し、高い訪問診療料をとる事例が頻発したため、同じ建物への訪問診療料を大幅に減らした。その余波で訪問診療から撤退する医師が相次ぎ、施設事業者が窮地に陥っている。混乱する現場を訪ねた。

高齢者施設が悲鳴
「5月からはもう無理だと言われた。他を当たっても返事が来ない」。4月、千葉県市川市の介護付き有料老人ホームの幹部は頭を抱えた。訪問診療に来ていた地元のクリニックが今回の料金引き下げで「医師の人件費が賄えない」と、辞退を申し出てきたためだ。
料金が下がった訪問診療に手を出さないのは他の医療機関も同じ。自ら通院できない入居者は別の施設を探すか、救急車を呼ぶほかない。地元では代わりが見つからず、ようやく東京都内の医師に5月から来てもらうことで一息ついたが、「先々不安」なままだ。
「全国特定施設事業者協議会(特定協)」など高齢者向け施設や住宅の団体の調べでは、訪問診療をやめる医療機関が1割、規模を縮小するのが3~4割。5割は続けるとしたが「様子見やいずれ撤退するといった声も多い」(特定協の長田洋事務局長)。
主な引き下げ対象はある患者を月2回以上定期的に診察すれば毎月定額を受け取れる「医学総合管理料」。もともと厚労省が在宅患者を手厚く診る「かかりつけ医」を増やそうと、患者1人あたり最高月5万3千円と料金を高くしていた。
これを4月からは月1万5千円に72%引き下げた。厚労省は引き下げの理由を高齢者施設で1人あたりの診察時間を数分と短くし、多くの患者を診る「不適切な事例」(宇都宮啓医療課長)への対策と説明する。
同省は昨秋までに全国20カ所でこうした事例を確認した。月2回の訪問診療を受けることが入居の条件となっているサービス付き高齢者向け住宅や、本人が同意しているかどうかにかかわらず、9割超の入居者に訪問診療を受けさせた軽費老人ホームもあった。
大阪府の訪問診療専門の50歳代のA医師は「若手医師を時給1万~2万円で集め、大がかりに高齢者施設に訪問診療する専門クリニックがある」と証言する。
これらは昨年12月に訪問診療の報酬を不正請求したとして保険医療機関の指定を取り消された大阪市の歯科などの事例とは違い、直ちに不正とはならない。だが高い料金目当ての「過剰な診療」とみて、料金下げで抑制しようとした。

在宅推進に逆行
「まともな診療まで一律に規制するのは暴挙」(A医師)との意見に加え、ちぐはぐな国策の矛盾を問う声も強まる。3月末に日本医師会が都内で開いた臨時代議員会では北海道の医師が「政府による在宅医療の推進に逆行するのではないか。現場の士気は著しく落ちている」と訴えた。
厚労省は高齢化に備え、在宅医療・介護に政策の重点をシフト。集合住宅で必要に応じて医療や介護を受けられる施設を増やす流れにある。民間企業の参入で、有料老人ホームの定員数は10年余りで10倍近い30万人超まで伸び、2011年度に始まったサービス付き高齢者向け住宅も3月末で14万6千戸を上回った。こうした住宅が「特別養護老人ホーム並みの重度者を受け入れる例も多い」(A医師)。
料金引き下げを見直すよう医師や事業者の要望を受けた与野党議員の国会質問に、田村憲久厚労相は「場合によっては見直しも含めて検討させていただく」と答弁。厚労省は一部例外を設けながら診療報酬改定は実施し、訪問診療の撤退があれば医師会が医師を紹介する仕組みを作るとした。
だが福岡県の医師会に所属し、有料老人ホームに訪問診療する医師は「(24時間対応の負担の重さを敬遠し)消極的な医師会もある」と明かす。医療費削減に向けて、診療報酬の引き下げは避けて通れない課題だが、現場の実態には十分な配慮が必要だ。

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当たり前のことではあるけれど、仁術と言えども職業は職業。
成り立たない商いでは、救うものが救われない。
2割の在宅医よりも8割の医師を要する病院経営に天秤は傾いたと云う事だろうが、
あからさまに、本音が透けて見えるのは、介護保険も同じ。
国は本当に、高齢者を長生きさせるために予算を割くのだろうか。
お金を投入してまで、高齢者社会を維持したいのだろうか??
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